
人間は紀元前からずーっと戦争を繰り返しています
歴史書を見ればわかりますが、何度も懲りずに争っています。
名前の付いた有名なものでも、
・中国の三国志
・ナポレオン戦争
・アメリカ独立戦争
・2 つの世界大戦
・湾岸戦争
・朝鮮戦争
・ベトナム戦争
・アフガニスタン戦争
などなど、たくさんあります。
ウィキペディアで戦争一覧を見ると星の数程、戦っているのがわかります。冷戦なんてものもあります。
日本国内に絞ってみても、合戦と呼ばれるのは山程あります。
・応仁の乱
・島原の乱
・関ヶ原の戦い
・天保騒動
・桜田門外の変
・戊辰戦争
などなど、とにかく戦争ばっかりしています。
「平和第一」とか「平和主義」などのスローガンが掲げられている一方、ずっと殺し合っているのです。
今回はこのテーマに踏み込んでみたいと思います。
人は何故、戦争をするのか?
これが理解できてくれば、自分の身近な人間関係にも応用できると思うからです。
戦争は国家や地域同士で起こる事ですが、少し近づいて見れば、それは人間同士が行うケンカと変わりありません
友達同士のケンカ、恋人同士のケンカと同じです。
最近は家庭内暴力や夫婦間 DV などが取り沙汰される事が多いですが、こういう事も戦争を考えてみる事で、その根本的原因が見えるかもしれないと思うのです。
争いの無い健全な人間関係を構築できるよう、今回はマクロの視点である戦争から見ていきたいと思っています。
それでは今から僕の見解を話しますが、今日僕が主張していく内容はマクニールさんという方が書いた「戦争の世界史」という本をベースにしています。
上下巻で合わせて 800 ページ位になる重厚な本ですが、内容は素晴らしく、今回のテーマを考える上で参考になりました。
その「戦争の世界史」を読んで思ったのは、戦争の因子は 2つあり、それが重なった時に起こるのだという事です。
ではその因子とは何か?
その 1 つ目が、
マクロ寄生
「寄生」とはある生物が他の生物から栄養を持続的かつ一方的に収奪する事を指します。
ここで「マクロ」としたのは疫病のようなミクロ的な寄生と区別するためです。
基本的には人間同士の寄生の事だと思って下さい。
具体的に言うと、自分達が必要な物資を自分で生産したくない、相手に何とかしてもらいたい、という思いからくる行動です。
例えば、自分が食べるための食糧を他の人に何とかしてもらおうとするような事です。
こういうのは植民地を作る思想に繋がります。
他にもエネルギー資源を奪おうとする行為があります。
中東で戦争が絶えない理由は正にこれです。
戦争はだいたい食とエネルギーの奪い合いなのですが、こうした自分に必要な物資を相手に何とかしてもらおうとする根性から始まっています。
既にこの時点でケンカが起こりそうなものですが、実はこれではまだ足りず、戦争という事象に発展するにはもう 1 つ重要な因子が絡んできます。
その 2 つ目が、
コマンド
コマンドとは「指令」「命令」の事ですが、実はこれは人間の行動様式の 1 つです。
面白い事に人間の行動様式には 2 つあって、
「指令的な行動様式(コマンド)」
「市場的な行動様式(マーケット)」
が存在します。
コマンドは上から命令される事によって「よしやろう」という気持ちになる事です。
例えば親から命令されたり、先生から命令されたり、上司から命令されたり、お上から命令されたり、そういう事を指します。
もう 1 つのマーケットは逆に自由な行動です。
マーケットという言葉から連想できるように、経済のような奔放さをもった行動を指します。
誰から命令されるのではなく、自らの気持ちや周りの状況によって動くようなものです。
簡単に言ってみれば、「面白そうだからやる」「いつもより安いから買う」みたいな事です。
聞きなれない人には少し分かり辛いかもしれませんが、ザックリ言うと
コマンド=束縛
マーケット=自由
と思ってもらえれば良いと思います。
人間はこの 2 つの行動指針を持っているのです。
自由<束縛
こう言うと、
「束縛が行動指針?」「そんなバカな」
と思う人がいるかもしれません。
一般的に縛られるのは辛そうな感じがするし、命令されるのはネガティブな印象があるので、むしろ行動に繋がらないのではないか?と感じる人はいると思います。
しかし、実は人間は縛られるのが好きです。
上から一方的に命令されるのが好きです。
自由よりも束縛される方がずっと好きなのです。
多くの人が会社に入っているのがその証拠です。
「待遇が悪い」「上司が嫌いだ」と言いながら一向にその場を離れようとしないと思います。
離れたとしてもまた同じように会社勤めをします。
何故かと言えば、安心できるからです。
ガチッと縛られて守ってもらえるのでとても心が安らかになれるのです。
逆に自由でいるのは不安です。
自由とは聞こえはいいですが、誰も身の安全を保障してくれないのでとても不安定で心配が絶えません。
だから、皆会社に勤めるわけです。
専業主婦になりたい女性も同じです。
キッチリ守ってもらって安心したいから旦那さんの世話役になる道を選びます。
別に会社員や専業主婦の悪口を言っているわけではないので勘違いしないで下さい。
ただ単純に、そういう行動様式があるという事を知ってほしいだけです。
ちなみに、人々のこうしたコマンド精神に訴えかけるのが上手な人はリーダーシップがあると評価される事が多いです。
小泉純一郎元総理なんかはその典型だったと思いますが、彼には何だか安心感がありましたよね。
彼の力強い指令・命令によって国民は守られている事を実感できたのです。
だから小泉政権は 5 年も続いたのでしょう。
戦争の起こし方
話を戻しますが、人間は束縛されるのが好きです。
昨今、ノマドなどの言葉が流行して「自由に生きよう」など言われますが、実は人間は根本的には縛られたがっています。
行動様式はコマンドとマーケットの 2 つがありますが、力関係で言えば圧倒的にコマンドの方が強いからです。
何故コマンドの方が強いかと言えば、それは歴史的な長さに裏打ちされます。
コマンドは古代から存在していた行動様式ですが、マーケットは 1000 年位前に生まれた概念なのです。
マーケットは自由経済が世界に広がった事によって発生した非常に新しい行動様式で、まだ歴史の浅い未熟な行動理念でもあるのです。
ともかく人間はコマンドに支配されやすいという事です。
そして、先程話した 1 つ目の因子のマクロ寄生とこのコマンドがガッチャンコした時に戦争が起こります。
つまり、自分達が必要な物資を自分で生産しないという人間のマクロ寄生の性質が掠奪の起源となり、更に上からのコマンドによって集団的暴力へ発展する、
それが戦争です。
紀元前の戦争も、中国で長く続いた戦国時代も、中世ヨーロッパの覇権争いも、近代の世界大戦も、最近の戦争も、全てこれです。
一方的に搾取したいというマクロ寄生と命令に反応するコマンドの行動様式により国家や地域でマクロ的な争いが起こったのです。
勿論、マクロ寄生だけでもケンカは起こり得えます。
他人から奪おうとする行為は争いの火種となります。
しかし、それだけだと行動まで移す事は余り無く、あっても規模は非常に小さいものとなります。
コマンドがある事で爆発します。
上からの指令がある事で安心して行動に踏み切れるようになり、参加人数も多くなっていきます。
マクロ寄生とコマンドが両輪で動く事により、戦争が起こっていると言えるのです。
平和への道
ここで僕達が考えなければいけないのは、この 2 つの性質からどう脱却するかです。
マクロ寄生とコマンドから脱却できれば、少なくとも自分が戦争を起こすような人間では無くなります。
ケンカや争い事をするような不毛な存在ではなくなるのです。
そして、自分が争いをしなくなれば、鏡の法則で相手も自分を攻撃しなくなります。
ここを鏡の法則で片づけてしまうのはいささか乱暴な気もするのですが、正確に説明していると今回の趣旨からどんどん遠ざかる可能性があるのでこのまま行かせて下さい。
とにかく、マクロ寄生とコマンドから脱却する事です。
そのためには何をすればいいのか?
まずはそれぞれの性質を知る事が重要です。
マクロ寄生する人間は具体的にどんな人間か?
コマンドに支配された人間は具体的にどんな人間か?
それぞれがハッキリ明確にわかってくれば、後はそうならな
いよう意識付けていくだけです。
それではそれぞれの性質を見ていく事にしましょう。
寄生型人間
まずはマクロ寄生型の人間ですが、こちらは一言で言えば効率性が大好きな人間です。
小さな努力で可能な限り大きなリターンを得たいと思っている人です。
宝くじとか投機に引かれてしまう人はその傾向が強いと思われます。
儲けたいけど自分は余り努力したくないから誰か何とかしておくれ、という行動ですから正に寄生です。
ちなみに投機とは投資とは違うので誤解のなきよう。
投資は将来的に利益を上げる事を目的に行う資産運用。
投機は短期的な価格変動の目論見から利ザヤを得る行為。
要は短期的思考の人、楽して生きたい思考の人はマクロ寄生型の人間だという事です。
「手っ取り早く痩せる方法を教えて下さい!」みたいな事を恥ずかしげも無く言えてしまう人は非常に危ないです。
夏休みの宿題を最終日に写させてもらったり、テスト前にノートをコピーさせてもらうという学生も同じ事です。
或いは「ブラック企業」なんて言葉を簡単に発してしまう人もそうです。
自分の待遇が悪い事を会社の責任にして、ただ文句を言っているだけですから、寄生以外の何者でも無いと思います。
そういう意味では労働組合に守ってもらおうとする人達も同じです。
場を家庭に移せば、親の年金や生活保護を当てにして生活しているのもそうですよね。
パラサイトシングルなんて言葉もある通り、それは立派な寄生なのです。
指令型人間
続いてコマンド型の人間ですが、こちらは責任を負うのが嫌いで、誰かにケツを拭いて貰えないと行動できない人です。
例えば、仕事で自分の作業が終わった時、他にやれる事を探さずただ待っている人です。
自分で勝手に何かを始めてしまうとそのケツを拭かなきゃいけなくなるので絶対に動きません。
誰かに言われるのを待っているタイプ、指示待ち人間は全部そうです。
同じような意味では、僕への質問で具体的に使っているサイトやメーカーを聞いてくる人は危ういです。
自分の責任で失敗したくないから、自分では調べず相手に任せるわけです。
似たようなもので「解」を求める人もそうです。
「どうすれば治りますか?」
「何をすればいいですか?」
みたいに直接解答を聞くような人です。
そもそもこの世の中に正解なんて無いのですが、何故だか「ある」と思い込んで聞いてきます。
これは戦後の学校教育で答えのある問題を解き続けた事が元凶と言われていますが、コマンド人間の分かりやすい特徴でしょう。
意識改革
こうして見るとマクロ寄生とコマンドの性質は、以前書いた二極化の記事の「窮屈な人」に似ている事に気付いた人もいると思います。
その方は鋭いです。そう、窮屈な人ほど人と争うのです。
それはともかく、今列挙した事に当てはまる人は戦争を起こす人間である事を自覚して下さい。
と言っても多分、ほとんどの人が当てはまるはずです。
「人間は戦争する生物」と定義する人もいる位ですから、どんな聖人でも少なかれマクロ寄生とコマンドの性質を持ち合わせています。
でもそれでいいのです。
まずは自覚する事です。
その後で意識を変えていく事に意味があります。
ではどんな風に意識変革をしていくべきか?
その 1 つは、
寄生から共生へ
共生とは相互関係で利益をもたらす事です。
一方的に相手から搾取する寄生とは違って、お互いがお互いのために生きる状態です。
よく出される例としては、ヤドカリとイソギンチャクがありますよね。
人間と腸内菌も同じです。
もっと言えば、ライオンとシマウマも共生です。
これはピンと来づらいかもしれませんが、ライオンとシマウ
マの捕食関係はお互いの生態系を守っています。
ライオンはシマウマに生かされているし、シマウマもライオンに生かされているのです
動物界は基本的に共生しか存在しません。
勘違いしてしないで欲しいのは食物連鎖と戦争は違うという事です。
食物連鎖は共生であってバランスを取るものです。
一方の戦争は寄生であってバランスを崩すものです。
だから戦争の後は色々な問題が起こりますよね。
元々、世界は共生でできています。
共生である事はこの世の本質だと思います。
共生をもう少し臭い言い方にすると「愛」です。
そう考えると、寄生は共生が歪められてしまった歪な愛の形
とも言えると思います。
僕達はそれを元の正常な愛に戻す事を目指します。
自分の行動が寄生なのか共生なのか、よく考えてみて下さい。
子どもにテストで良い点を取らせるのはどちらでしょう?
恋人に贈り物をしてあげるのはどちらでしょう?
親の面倒を見て一緒に暮らすのはどちらでしょう?
勿論、同じ行動でもその人の動機によって寄生か共生かは変わって来ます。
よく考えてみて下さい。
そして、もう 1 つの意識変革が、
コマンドからマーケットへ
正確に言えば、コマンドとマーケットのバランスを取っていく事です。
現在はコマンド思考寄りの人が多いので敢えてコマンドからマーケットへとしましたが、本来は両者の均衡が取れている必要があります。
人間はコマンドとマーケットの両方、つまり束縛と自由、両方の性質を持っているのでそのバランスが重要なのです。
コマンド寄りになると戦争が起こると言うのは先に述べた通りですが、マーケット寄りになるのも問題があり、それが度を超すと人は無節操になっていきます。
例えば、自由主義経済が発展していくと、儲かれば何でも有りみたいな発想が出ますが、人もこれと同じようになってしまうのです。
利益のためなら人を騙しても良いとなります。
その結果、オレオレ詐欺なんかも出て来ます。
キャバ嬢やホストが客に貢がせるのも当然みたいな風潮になってきますし、情報弱者が高額商品を売りつけられるのも当たり前になってきます。
嘘を付いて平気で二股も行えるようになります。
何でもかんでも自由にしてしまうと正義や美徳みたいなものが失われて、節操の無い人間になってしまうのです。
社会にも束縛するルールが必要なように、人間にも束縛するコマンドが必要です。
だからコマンドとマーケットのバランスを取るように心掛けねばなりません。
自分の行動がコマンドに寄り過ぎていないか、それともマーケットに寄り過ぎていないか、よく考えてみて下さい。
年金を払っているのはどうでしょうか?
海外旅行を楽しむのはどうでしょうか?
副業をして一攫千金狙うのはどうでしょうか?
こちらも行動というより意識が重要です。
どんな理由でそれを行っているのかによってコマンド寄りなのかマーケット寄りなのかが違ってきます。
どちらに寄り過ぎてもダメですが、まずは自分の現状を考えてみて下さい。
戦争の無い世界
読み手によっては抽象的に感じてしまったかもしれませんが、僕は戦争をしないためには、この 2 つの意識改革が重要だと考えています。
寄生から共生へパラダイムシフトができて、コマンドとマーケットのバランスが取れれば、僕達は争いから解放されます。
非常に難しい事だと思いますが、やる意義はあると思っています。
世界の全員ができるわけではありません。
むしろほとんどの人ができないと思います。
僕もできるかわかりません。
でも、やる意味はあると思うのです。
戦争やケンカの無い世界が来る事に淡い気持ちを込めまして、今回この記事を書いてみました。
一人一人が目覚めていく事により、少しずつでも良い人間関係の輪が広がっていけば嬉しく思います。